介護手すり取り付け位置・高さ (廊下・玄関・階段・トイレなどの室内)
手すりの使いやすい位置高さは身長・身体機能で変わります。
以下に記載する手すり位置高さを目安に、
自宅に手すりをつける場合は、利用される本人に手すり高さを確認してもらいながら取り付けましょう !
1:廊下手すりの位置・高さ
①腕を真っ直ぐ下した状態で手首の位置
②大腿骨大転子の位置
③サイズを合わせて作った杖の高さ
など、いくつか方法があります。
以上の測り方をすると手すりの高さは
床から750~850mmの範囲が多くなります。
(日本人70歳の平均身長:男165cm、女152mm)
簡単に言うと、身長の半分の高さです。
記載があったので公共施設の手すりをその高さで設置して
いることがありますが、実際には750mmでは低く感じる
方が多くなります。(8:手すり高さの測定参照)
廊下等の水平な場所は高さ800mm程度が標準です。
(棒の中心で800mm、棒の上端で820mm程度)
杖が何本もつながったイメージです。
上から軽く押さえつけながら手をスライドして利用します。
2:出入口手すりの位置・高さ
体を近づけて手すりを握ると、手の位置が肩の高さぐらいになります。
扉の横に手すりをつける場合、手すり上端は肩の高さ、または肩より少し上の位置が目安です。
壁やドア枠をよく見ると、手垢で汚れている場合があります。
頻繁に触って汚れている位置を目安にする方法もあります。
転倒が多い人、下肢筋力が弱く床移動が多い人は、床から立ち上がることも
考えて低めの位置から手すりを立ち上げましょう。
【注意点】
手すりを握っている指が開く扉に擦らないように気を付けましょう。
3:階段手すりの位置・高さ
上がりきった際に体を引き上げることができます。
手すり棒の先端は、パジャマの袖口が引っ掛からない形状の金具を取り付けましょう。
4:トイレL型手すりの位置・高さ
立ち座りは上下動作なので、たて手すりやL型手すりが有効です。
(握力の弱い方は横手すりが有効です。)
たて手すり位置は便器の先端から200~300ミリ程度前方が標準です。
よこ手すり高さは便座より230~300ミリ程度上が標準です。
立ち上がった姿勢でも体の前方で掴めるように手すりを取り付けましょう。
便器から手すりが遠くなるほど、体の重心移動を利用して立てるので
力学的には立ちやすくなります。
逆に便器に近すぎると腕力に頼ることになり手すり効果を発揮できません。
【注意点】
立ち上がった姿勢で手すりが背中側にまわり、肩に負担が掛からないように気を付けましょう。
【紙巻器の位置】
紙巻器は便座からの高さが230mmより低いと使いにくくなることがあります。
座った状態で膝よりも下にあると使いにくくなります。
よこ手すり上側に紙巻器を設置すると、握れない部分が出来てしまいます。
手すりと紙巻器位置の取り合いも事前確認が必要です。
▲ちょうどいい手すりと紙巻器の取付位置
5:便器正面のよこ手すり
便器正面に手すりをつける場合は以下のことに気をつけましょう!
・前かがみで立つときに、頭が壁にぶつかる。
(手すり位置が低いほど、頭をぶつけやすくなります。)
・男性が立って使用するときに、腰に当たる。
・介助者の腰に当たる。
便器の先端から壁まで400mm以上の距離が無い場合は、
手すりが邪魔になる可能性があるので、他の方法も検討しましょう。
たて・よこ・L字型…
無理な姿勢で使うことの無いように
手すりを取り付けましょう!
6:玄関上がり框手すり
日本家屋の場合、靴を脱ぐ玄関に高さ200mm程度の段差があります。
段差昇降、立ち座り動作は上下の動きなので、たて手すりが有効ですが
玄関の形状に合わせてL型・T型・連続型などいろんな方法が考えられます。
体を近づけて手すりを握ると、手の位置がちょうど肩の高さぐらいになるので、
手すり上端は廊下側に上がった状態で肩の高さか、それよりも少し上まで伸ばします。
上り框に腰かけて靴を履く場合は下に長くてもいいでしょう。
T字に連結したり、斜めにつなげたりいろんな組み合わせ方ができます。
踏み台や上がりかまち手すりを利用する方法もあります。
段差の少ないマンション玄関であれば横一文字でもいいです。
いろんな方法が考えられるのでご自宅に合わせて
利用者・ご家族の使いやすい手すりを設置しましょう。
【重要】
段差を上がる時下りる時、手すりを持つ位置は常に体の前方です。
7:手すり取付位置を決めるときの注意点
注意事項① 本人不在で決めない。
入院中の場合は必要最小限にとどめ、退院後に確認して必要なら追加する。または、一日仮退院して確認して決めましょう。
注意事項② 利用者の位置確認。
手すりを固定する前に利用者に位置高さを確認してもらいましょう。【高齢者の手すり】
前述の1~6までの手すり位置は目安です。利用される方の身長・身体機能・ご家族状況により異なります。
利用者の動作確認を行い、使いやすい位置、高さ、長さで手すりを取り付けましょう。
【片麻痺の方の手すり】
体のバランスを崩しやすい方は、通常よりも高めが使いやすくなります。段差がある場所や、方向転換する場所で、
たて手すりを、高い位置でつかんで、体を引き上げたり支えたりします。
よこ手すりを、おヘソぐらいの高めの位置で持った方が安定します。
階段や段差は、健足から上がり、麻痺足から下ります。
手すりの位置は上がる時と下りる時で使える手の位置が変わるので、
両側に取り付けるか、後ろ向きで下りるなどの工夫が必要です。
【身体障がい、難病の方の手すり】
手すり位置の基準はありません。利用者によって使いやすい位置・高さはさまざまです。
利用者や介助者の意見を聞きながら手すりの位置を決めましょう。
身体障がい者・難病の方は身体機能・動作に制限があるので
出来るだけ希望する位置に手すりをつける努力が必要です。
病院や行政の理学療法士(PT)、作業療法士(OT)など
セラピストと連携をしながらプランを立てましょう。
8:ちょうどよい手すり高さの測定
<一般社団法人人間生活工学研究センターによる測定>許可を得て掲載
【被験者数】
総数 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 | 80代 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 101 | 8 | 9 | 10 | 11 | 31 | 22 | 10 |
女性 | 112 | 10 | 12 | 12 | 16 | 32 | 24 | 6 |
【測定方法】
男性101名・女性112名に、手すりの高さを750mmに設定し、持ちやすさを5段階(2~-2)から選択してもらう。
【測定結果】
高さ750mmの手すりを高齢女性以外はやや低く感じます。↓
以上の結果より、身長・身体機能によりますが、床から手すり棒中心まで800mm(上端820mm)の高さが標準的と言えます。